Published: February 14, 2018
「The Internet Computer / Cloud 3.0」のDfinityが累計1億ドルの巨額資金調達に成功しました。累計1億ドルを集めるからにはそれなりの理由があるはずです。今回は「Dfinityとは何か」を5分で掴むことを目指しましょう。
Dfinityはクラウドコンピューティングにブロックチェーン技術を適用することを目指したプロジェクトです。一般的なアイデアはEthereumに似ていますが、Ethereumの現在のスケーリングの問題を解決し、Threshold Relayという新しいプロトコルを適用することで、Ethereum仮想マシン(EVM)の計算能力を大幅に向上させると主張しています。ネットワークの歴史は「サーバークライアント」から近年の「クラウド」へと移行を続けて来ましたが、Dfinityはこのクラウドを分散化されたプロトコルの上に成り立たせることができると主張している点に新しさがあります(Cloud 3.0)。Dfinityが主張する通りのパフォーマンスを弾き出したとすれば、さまざまなサービスがDfinityのネットワークの上に誕生することになるでしょう。
この高度な新しいプロトコルは、新しいクライアントがネットワークに加わった後も仮想マシンをスケールアウトできると主張されています。つまりトランザクションの速度、量、ネットワークのスケーラビリティ等、ビットコインやEthereumが抱える課題をことごとく解決していると、Dfinityは主張しています。
もちろんこれまでも「Golem」のようなプロキェクトが存在しました。これらとの違いは何か?最も異なるのは取引の「ファイナリティ(確定性)」の即時性です。Ethereum(イーサリアム)より約150倍速く、ビートコインよりも900倍も高速だとDfinityは主張しています。
なぜならDfinityはユニークなコンセンサスアルゴリズムを採用しています。「Threshold Relay(閾値リレー)」と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムにより即時的な確定性(ファイナリティ)を得ることができると説明しています。Threshold Relayはスタンフォード大学が考案したBLS署名を採用しています(Difinityチームの光成 滋生による説明)。
アルゴリズムの詳細に関しては以下から。非常に難解なので私も下手な説明ができません…。
White Paper Threshold Relay slide
この仮想マシン上で実行されるビジネスアプリケーションは一度動き始めると止まりません。データベース、バックアップおよびリストアシステム、Amazon Web Servicesなどの複雑なコンポーネントを必要とせず、必要な人的資本を削減することでコストを90%以上削減できる、とDfinityは主張しています。Dfinityはそのような強力な公共資源には「ガバナンス」が必要だと考えています。
EthereumとBitcoinは「The Code is Law(コードが法律)」というパラダイムも受け入れています。つまりプラットフォームの使用やネットワーク自体を管理するガバナンスがなく、多くのプラットフォーム利用者が高度に管理された環境を求めています。
DfinityブロックチェーンはBitcoinやEthereumとは異なり、同社が所有、管理されるものになります。プライベートチェーンとしてのエンタープライズITのインフラとしての役割を目指していると考えられます。Enterprise EthereumやHyperledger等がターゲットにしている領域であり、強力なライバルとみていいでしょう。
Dfinityのビジネスには2つの柱があると説明しています。ひとつは Uber、eBay、ソーシャルネットワーク、メッセージング、さらにはWeb検索などの伝統的な独占技術提供者の多くが、独自の分散型ガバナンスシステムを使用して自らを更新する自律型ソフトウェアを使用して「オープンソースビジネス」として改革される可能性があるということです。
もうひとつは企業のITシステムも新しい技術を活用してコストを大幅に削減することを目指したいと考えています。現状は「ブロックチェーン仮想コンピュータ」が提供するリソースがAmazon Web Servicesなどの従来のクラウドよりもはるかに高価であるため、難しいのです。しかしエンタープライズITシステムの運用に伴うコストの大部分は計算そのものではなく、人的資本に起因します(日本では「人月」という不名誉な言葉で呼ばれます)。DFINITYクラウドは人的資本がはるかに少ないシステムを構築することができるため、大幅なコスト削減が可能です。
コンセンサスメカニズムのルーツは、チーフサイエンティストDominic Williamsがスケール可能で効率的なコンセンサス手段を推進する方法を模索し始めた2014年にさかのぼります。このプロジェクトは2015年初頭にドミニク・ウィリアムズによって開始され、自己資金で操業していました。プロジェクトは2017年初頭にシード資金を受領。7日に発表された通り、6000万ドルの調達を行い、累計調達額は1億ドルに達しています。VCが出資するプロジェクトなのでそれ相応のデューデリジェンスが行われているでしょうし、プロジェクトを進捗させるインセンティブがチームにもステークホルダーにも生じているはずです。